電力会社を辞めた理由(72)

どうも、しそです。

今回は、電力会社を辞めた理由(72)についてご紹介します。

(電力会社を辞めた理由(71)の続編です。)




牛歩カード

電力会社の通勤は、公共交通機関の利用が原則です。

電車(JR・私鉄)やバスが主流となりますが、如何せんそこは地方。

主要な路線であっても、1時間に3本あれば良い方で、基本的には1~2本。

特に強風・降雪時の遅延は酷く、無駄に市街地にある事業所への道は混雑・渋滞し、定刻通りに運行されることはまずありません。

(電力会社を辞めた理由⑤を参照のこと。大金を手出しし、自家用車での通勤を強制される現実。)

特に困るのが、隣県に住んでいる場合の本店への出勤・出張時。

最寄り駅が新幹線の出発駅より”手前”であれば問題なく乗車できるが、”先”であれば折返しての乗車は認められず。

結果、新幹線であれば数十分で到着するところ、鈍行列車で1時間以上を掛け、ぶらり各駅停車の旅。

(最近ようやく制度が変わり、出発駅までの電車賃を実費負担するならば、折返し乗車が認められるようになったとのこと。それでも、劣悪な環境であることに変わりはない。)

鉄道ファンにはたまらない、圧倒的なご褒美。

本店様、ありがたやぁ~!



足並み揃わぬ装柱

電力会社の配電部門では、電柱に架線する金物の取付方法のことを、装柱(そうちゅう)と呼びます。

(電柱の装柱【京都編①】電柱の装柱【大阪編①】を参照のこと。おっと、涎が…)

電力会社によって使用する資材・部材は異なるため、その仕上がりは十人十色。

どこに旅行をしても柱上ばかりを凝視し、飽き足らず永遠に眺め続けることが可能です。

電力会社を辞めた理由㊶でも多少紹介した通り、他人事であるから楽しめるのであって、電柱管理者の現実は想像以上に悲惨。

その理由としては、同じ電力会社であっても、県を跨ぐと装柱が大きく変わることが多々あるため。

折角本店が音頭を取っても、各県の支店が独自の意見を持ってして、思い思いに現場を施工。

(常々、本店からは目をつけられているが、全く気にしない支店。元より、隣県同士の仲が悪いのは、過去より万国共通の認識。)

例えば高圧線の例を挙げると、本店がある県ではE型装柱と呼ばれる1.5m腕金の使用が一般的。

家屋側に1線、電柱を跨いで道路側に2線が架線される半片出しの装柱で、民地上空の占用は最小限。

(敷地の狭い、都心部に近づくほど強まる権利意識。限界集落では「電力さんの好きなとこに(電柱)建てていって!」が決まり文句。)

現実に即して合理的ではあるものの、配電線の亘長が延びるに連れて、徐々に道路側に傾斜する電柱。

(5~10径間おきに、家屋側へ地支線を設置することが望ましいが、実際問題不可能。)

間接活線作業にも対応し、攻守とも無敵を冠するが、かえって複雑化する装柱。

(避雷器のリード線一つをとっても、家屋側・中線・道路側への複雑な縁廻しを暗記する必要がある。)

CF遮断器を装柱するための、腕金の間隔・寸法もぱっと見では分からず、わざわざ白チョークでマーキング。

(コ型金物と組み合わせて取付するため、耐張碍子や中実碍子のように、単純に腕金に空いた穴の位置だけでは決まらない。)

一方、現場にはまだまだ残るF型装柱。

0.95m腕金が使用されるため、片出し・中留めのいずれの装柱の場合にも線間が狭く、強風が吹く度に停電が発生。

(高圧線の短絡・断線によって、配電線がOCトリップする欠陥品。こんな粗末なものが、澁澤賞を受賞するなど片腹痛い。)

民地上空の占用回避や看板・建物との離隔確保のため、1.8m腕金を組み合わせて道路側に3線を架線する片出しの装柱(通称:1.8スーパー)が娑婆中に存在。

ろくに検証もされないまま現場の思いつきで普及が進んだが、見るからに強度不足。

大方の予想通り、腕金の根本やバンドが折損し、脱落の嵐。

(新設時ならば分岐線に使われるSN-OC5.0mmであれば問題ないが、一度発錆し始めると幹線となるAL120sq~240sqはもちろん、より荷重の大きいOC-W80sq~150sqはまず保たない。)

気が付くと、架空線工事指針や架空線設計運用統一マニュアルにも施設が禁止される由々しき事態に。

それでは、他県ではどのように運用しているのかと言うと。

遥か昔から使用されている、T型装柱を採用。

家屋側に2線、電柱を跨いで道路側に1線。

家屋側に1線、電柱を跨いで道路側に2線。

1.5m腕金を中留めにて装柱し、1径間ごとにこれを繰り返し。

径間の前後で架線の位置が入れ替わるため、柱上のバランスは理想的。

ただし、民地上空の占用は最も大きく、新設時の用地交渉は割と困難。

(高所作業車での道路側からのアクセスを考えると、特殊な場合を除いて家屋側に3線が突き出すことはまずない。)

同様に、その昔は低圧線の架線にもT型装柱が用いられていたが、低圧引込線の電線ヒューズを取替する際に、高圧活線近接作業となることが度々あった。

(電柱の装柱【京都編②】を参照のこと。狭い柱上で、頭上:0.3m、躯側:0.6m、足下:0.6mの空間を確保するのは、至難の業。)

よって現在の主流は、高圧部に1.5m腕金、低圧部に低圧絶縁アームを組み合わせた、T-F混合と呼ばれる装柱。

(電柱の装柱【京都編⑥】電柱の装柱【大阪編③】を参照のこと。アーム自体は錆びないが、支持する短金物は当然錆びる。)

これが、現場における事実上の標準装柱。

そんな配電の現場を統括する第三種電気主任技術者は、各県にたったの一人。

慣例的に各支店のブレーンである、配電計画の部署に所属する課長が選任される。

(その昔は、上位系である工務系の電力部長が、配電も兼ねて面倒を見ていたと言う。驚きを隠せないどころか、もはや恐怖の域。)

自分が所属している事業所ですら目が行き届かないのに、より末端である郊外・限界集落の他事業所の管理などできるはずもなく。

その結果、現場では電験三種どころか、第一種電気工事士の国家資格すらも持たない、ガチの素人集団が設計・施工。

そう、既にお気付きの通り。

電力会社の配電部門において、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督は、事実誰にもできないのだ。

 

以上、電力会社を辞めた理由(72)についてご紹介しました。

電力会社を辞めた理由(73)にて、引き続きまとめていきたいと思います。

それでは、また。